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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「やッ、どうした?」

と、小文治が乗りつけてみると、ひとりの怪人、蔦之助を組みふせて鋭利な短刀をその胸板へ突きとおそうとしている。

「おのれ!」

くりだした槍。

黒衣の影は、そのケラ首をつかんでふりかえった。

「あッ、呂宋兵衛」

とおどろいたせつなに、小文治の馬も屏風だおれにぶったおれた。朱柄の槍先をつかんでいた呂宋兵衛も、それにつれてからだを浮かした。

「得たり!」

とはね起きた蔦之助、持ったる高札で黒衣の影に一撃をくらわせた。すごい声をあげたのは呂宋兵衛、したたかに肩を打たれたのだ。そして疾風のごとく逃げだした。

追おうとすると横合から、小文治の馬腹をついた菊池半助が、槍をしごいてさまたげた。

「よし、ひきうけた」

と朱柄の槍がからみあう。

黒樫の槍と朱柄の槍、せんせんと光を合わしてたたかっている。

それは小文治にまかせて、蔦之助は逃げる呂宋兵衛を追っていく、へんぺんと風をくぐって同じ色の闇にまぎれていく黒衣のはやさ、たちまち見うしなって河原へくだると、不意に、引っさげていた高札が、屋根板のようにくだけて手から飛んだ。

「何奴?」と大刀をぬく。

相手に眼をつけるまもあらばこそ、ぶーんッとうなってくる鉄の禅杖。