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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

発矢、火花!

「待てッ!」と、うしろで伊那丸がさけんだ。

「蔦之助ではないか! 忍剣、待て!」

「オオ加賀見――ヤヤ、そちらにおいで遊ばすのは若君? ……」

とあっけにとられて立ちすくんでいると、そこへ奇遇におどろきながら、小幡民部と龍太郎がうちつれて馳けつけてくる。

小文治も相手の半助をいっして、かなたこなたをさまよった後、やがて、ここの人かげを見つけて走ってきた。

はしなく落ちあった主従は、かたく手をとって喜びあった。

どうしてここへ?

どうして生きて?

同じ問いが双方の口をついてかわされた。

三

嵐のような声つなみがいくたびかくりかえされて、月は三方ヶ原の東から西へまわった。

渋面をつくった呂宋兵衛と、にがりきった菊池半助とが、片輪や死骸になった味方のなかに立ってぼんやりと朝の光を見ていた。

敵はどうした! 敵は?

陽が高くあがったが、その行方はついにわからなかった。

家康の不首尾な顔が思いやられる……

「どうするんだ、この復命を?」

「どうするったッて、ありのままに申しあげて、おわびを願うよりほかにない」

「計略はうまくあたったんだが……」

「あんな助太刀がうしろを衝いてこようとは思わなかったからなあ」