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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「おうッ!」

と目をおさえてたじろいだのは、あとからきた裏切り武士ども。すでに林の夜は濃く、あいての姿もかすかにしか見えない闇! そこに、一箇の炬火が廻っている! いな、廻っているのは独楽なのだが、あたかも、太陽のコロナのごとく、独楽はブンブン火を吹きながらまわっているのだ。

青か赤かむらさきか? なんとも見定めのつかない火の色、燿々とめぐる火焔車のように、虚空に円をえがいて馳けだしてきた!

「あッ」

と八方に逃げながら、その怪光をすかしてみると、独楽の持ち手はまぎれもない鞍馬の竹童。

「竹童だ! 竹童だ!」

だれの口からともなく戦慄の声がもれる。

「なに竹童? 多寡の知れた餓鬼ではないか、うぬ、おれが槍先に突っかけてやる」

神保大吉はこう豪語して、ふたたび槍を持ちなおしたが、おそかった!

びゅうと――独楽の紐がのびた。

「ひイッ」

と叫んだときは大吉の喉に、食いついたような独楽の分銅、ブーンとひとつ巻きついて、ふれるところに火焔をまわした。そして見るまにかれは顔を焼かれて悶絶した。

相手がたおれると火の魔独楽は、生きてるように竹童の手へもどった。そしてブンブンかれの片手に廻されている、次にはどいつの喉首へ飛ぼうかと。