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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

女性である。うつくしい人。

琴台の上に乗せてあるのは、二絃焼桐の八雲琴、心しずかに奏でている。そして、ふと琴の手をやめ、蛾次郎のほうをふりかえった。

蛾次郎は自分の顔がポッと赤くなったかと思って、どぎまぎと眼をまよわせたが、また見直すと、それどころじゃない、琴台の前にいるのは咲耶子ではないか。

「あッ……」

首を引ッこめると、

「蛾次郎ですね」と、おちついた声。

「いいところへきてくれました。手勢をここへ呼んできてください」

「あかといえ!」

蛾次郎、垣根のそとで逃げ腰になりながら、

「そういくたびも、胡蝶陣の計略にひッかかってたまるもんかい」

「うそではない、もうどんなことをしてものがれぬところ、わたしは覚悟をきめました。ほかの者を助けるためにね」

「じゃ、おめえひとりなのか」

「罪のない少女たちを、斬り死させるのはかわいそうです。あのひとたちの親兄弟にすみません。だから……」

「ほんとか? まったくか?」

「この通り小袖を着かえ、髪をなおし、うすい化粧までしているでしょう。これが覚悟の証拠です。わたしを縄にかけて、甲府へでも、浜松城へでも送ってください」

すると、とつぜんに、