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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

三

らんらんと光る二つの眼は、みがきぬいた琥珀のようだ。その底にすむ金色の瞳、かしらの逆羽、見るからに猛々しい真黒な大鷲が、足の鎖を、ガチャリガチャリ鳴らしながら、扇山の石柱の上にたって、ものすごい絶叫をあげていた。

そのくろい翼を、左右にひろげるときは、一丈あまりの巨身となり、銀の爪をさか立てて、まっ赤な口をあくときは、空とぶ小鳥もすくみ落ちるほどな威がある。

「おおいた! クロよ、無事でいたか」

おそれげもなく、そばへかけよってきた忍剣の手になでられると、鷲は、かれの肩に嘴をすりつけて、あたかも、なつかしい旧友にでも会ったかのような表情をして、柔和であった。

「おなじ鳥類のなかでも、おまえは霊鷲である。さすがにわしの顔を見おぼえているようす……それならきっとこの使命をはたしてくれるであろう」

忍剣は、かねてしたためておいた一片の文字を、油紙にくるんでこよりとなし、クロの片足へ、いくえにもギリギリむすびつけた。

この鷲にもいろいろな運命があった。

天文十五年のころ、武田信玄の軍勢が、上杉憲政を攻めて上野乱入にかかったとき、碓氷峠の陣中でとらえたのがこの鷲であった。