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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

必然。

その間髪には、ふたりの頭脳に、助かッたぞッ――という歓呼があがったであろうが、結果は同じことだった。ただ業火の地獄から八寒地獄へ位置を代えたにすぎなかった。

なぜ?

と――いうも迂遠な話で、すでに最前から小屋の外には、おびただしい人の足音が、なにかヒソヒソ囁きながら嵐の先駆のごとく、ひそかにめぐりめぐっていた。

待ちかまえてやあがったのだろう――。

不動明王に炎陣から蹴とばされたこんがら、せいたかの両童子でもあるように、火だらけになってころげだしたふたりをそこに見るやいな、

「それッ、その者を」

「やるな!」

とばかりいっせいに寄る氷雨と人影。

二どめの仰天。あッと、起きあがろうとしたのもおそい!

すでに霜と植えられた龍牙の短刀、もしくはながき秋水、晃々たる剣陣を作って、すばやくふたりの逃げ道をかこんでしまった。

三太郎猿の早飛脚

一

「ありがたい。味方がそとに待っていた。館のつよい武士たちが馳けつけていた」

と、よろこんだのは、せつな、蛾次郎の生きかえった気持。

それとは反対に、

「しまった、もう敵の手がまわったか」

と絶望的な驚きにうたれたのは、とっさ、竹童の感じたところで、いわゆる、一難去ってまた一難、もうとてものがれる術はないものと覚悟をきめた。