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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

二

「チェッ、ざんねん。あの八幡船のしわざにそういない。おのれどうするか、覚えていろ」

と地だんだ踏んでにらみつけたが、へだては海――それもはや模糊として、遠州灘へ浪がくれてゆくものを、いかに、龍太郎でも、飛んでゆく秘術はない。

二

ところへ、案じてかけてきたのは、小文治だった。

「若君のお身は?」

「しまッたことになった。船はないか、船は」

「あの八幡船のあとを追うなら、とてもむだです」

「たとえ遠州灘のもくずとなってもよい! 追えるところまでゆく覚悟だ。たのむ、早くだしてくれ」

「小船は一艘ありますが、八幡船のゆく先ばかりは、いままで領主のご用船が、死に身になって取りまいても、霧のように消えて、つきとめることができないほどでござります」

「ええ、なんとしたことだ――」

と、思わずどッかり腰をおとしてしまった龍太郎は、われながらあまりの不覚に、唇をかみしめた。

小文治は、それを見ると、不用意なじぶんの行動が後悔されてきた。母をうしなった悲しさに、いちずに龍太郎を下手人とあやまったがため、このことが起ったのだ。さすれば、とうぜん、じぶんにも罪はある。

かれは、いくたびかそれをわびた。