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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

そして、あらためて素性を名のり、永年よき主をさがしていたおりであるゆえ、ぜひとも、力をあわせて伊那丸さまを取りかえし、ともども天下につくしたいと、真心こめて龍太郎にたのんだ。

龍太郎も、よい味方を得たとよろこんだ。しかし、さてこれから八幡船の根城をさがそうとなると、それはほとんど雲にかくれた時鳥をもとめるようなものだった。――むろん小文治にも、いい智恵は浮かばなかった。

「こうなってはしかたがない」

龍太郎はやがてこまぬいていた腕から顔をあげた。

「お叱りをうけるかもしれぬが、一たび先生のところへ立ち帰って、この後の方針をきめるとしよう。それよりほかに思案はない」

「して、その先生とおっしゃるおかたは」

「京の西、鞍馬の奥にすんではいるが、ある時は、都にもいで、またある時は北国の山、南海のはてにまで姿を見せるという、稀代なご老体で、拙者の刀術、隠形の法なども、みなその老人からさずけられたものです」

鞍馬ときくさえ、すぐ、天狗というような怪奇が聯想されるところへ、この話をきいた小文治は、もっと深くその老人が知りたくなった。

「龍太郎どのの先生とおっしゃる――そのおかたの名はなんともうされますか」