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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

時に、光線のかげんで、そのまッ黒なつばさの艶を射るような金色の瞳までがありありと見えた。

いや、それだけならいい! それだけの事実だったなら、まだ地上の人々も、こうまでは胆をつぶさなかったにちがいない。

「あッ、帯がさがっている!」

「女の帯」

「赤い袖が見える」

「女が乗っているんだッ……女が、女が」

「ど、ど、どこに?」

「鷲のうえに――女が、女が!」

熱病のように叫びあった。

気ちがいのように指を向けた。

その時。

押しつもまれつする人波のあいだから、泳ぐように顔をだした鞍馬の竹童は、忍剣や小文治などの、仲間の者までむちゅうになって押しのけながら、

「あッ……た、大へん」

「竹童ッ、あぶないッ」

だれかがとめたが、突きとばして、

「それどころじゃない、あれ! あれは咲耶子」

「えッ、咲耶子ッ?」

「咲耶さんです、咲耶さんです! 躑躅ヶ崎の源氏閣からどこかへ逃げた咲耶子さんにちがいない」

「ウーム、そう申せば女らしい人かげがみえる」

と、木隠や小幡民部も、その大鷲にはおぼえがあるが、どうして咲耶子が、ここの空へ舞ってきたのか、ただただふしぎな思いにうたれるのみだった。