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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「うぬッ、奇ッ怪な女め」

鐘巻一火の腕に、ピタッと、鉄砲の筒がすわりついた。

ドーン!

御岳の岩根をゆるがすような轟音。

これも全山の人には、寝耳に水のおどろきであったろう。

ゴーッと遠い音波をひびかせて、峰谷々の木魂がひびき返ってきたあとから、ふたたび、山海嘯にも似た喊声のどよめき。

見よ、

鷲は、まッさかさまに墜ちてきた。

――うつくしい女の帯を尾にひいて。

文殊菩薩とほか四菩薩

一

鐘巻一火の鉄砲は狙いをあやまたなかった。

どこかにあたったにちがいない。その証拠には、くるった大鷲は、地上十四、五尺のところまでおちてきた。

だが。

とつぜんそこで、クルッと巨大なからだをまわしたと思うと、あッとあきれる人声をあとに、鷲は天目山の方角へむかって、一直線――弩をはなれた鉄箭のように飛んでしまった。

しかし。

人々の眼は、その行方に気をうばわれているよりも、とつぜん試合場の南のすみへ、

「それ」

と、なだれをうってあつまった人かげへ、なにごとかと、あたらしい驚目をみはっている。

「お医師! お医師衆!」

と、そこでさわぐこえがする。

あなたの控え所へ出張っていた典医衆は、なにがなにやらわからないが、とにかく、呼び立つこえがしきりなので、薬籠をかかえてその人なかへかけつけた。