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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

二

忍剣のうしろには木隠龍太郎、山県蔦之助、巽小文治、竹童など、いずれも非凡な面構えをして突ッ立っている。

長安は、まさかそれが、小太郎山の残党、伊那丸幕下の者であろうとは夢にも知らず、

「なにッ?」

と、五人のすがたへ賤しめるような目をくれて、

「何者だ! きさまたちは」

きッとなって、睨めつけた。

忍剣はおちつきはらって、

「拙僧は西方の国より大心衆生の人間界に化現した釈迦の弟子、文殊菩薩という男。――またうしろにいるのは、勢至菩薩、弥勒菩薩、虚空蔵菩薩、大日菩薩の人々であるが……」

あまりでたらめなことばに、あい手があッけにとられているのを見くだしながら、忍剣はきまじめに、

「ただいま、われらとしたしい勢至菩薩が、鷲にのって天行しつつ、この試合場をながめているうち、一火殿の鉄砲に傷つけられたようすゆえ、一同そろって見舞いにまいったのでござる。それを浜松城へ差し立てる罪人などとは、飛んでもないあやまり、どうか、あの婦人は吾々のほうへお渡しを願いたい」

(こやつ、気狂いにそういない)

石見守は相手にせず、一火へ向かって、

「いざ、こうしてひまどられては、かんじんな試合の順序がおくれるばかり。