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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

――武田の残党を憎むことが、いぜんよりもはなはだしい。そして、秀吉と覇をあらそううえにも、つねに背後の気がかりになる伊那丸君やそれに加担のものを、どんな犠牲を払っても、根絶やしにしなければならぬと、ひそかに支度をしつつあるのだから」

老骨とは思われない若々しい居士の語韻のうちに、仙味といおうか、童音といおうか、おのずからの気禀があるので、小文治はつつしんで聞いていたが、話がとぎれると、遠駆け試合の決勝が気にかかって、じッと落ち着いてはいられない気がする。

「もし、果心居士先生」

たまらなくなって、腰を浮かしかけた。

「なんじゃ」

「せっかく、お話中ではございますが、ご承知のとおり、わたしはいま遠駆けのとちゅう、この矢をもっていっこくも早く試合場へもどりませぬと……」

「ウムぞんじておる」

「でも、ただいまも仰せられたとおり、まんいち不覚をとりますと咲耶子の身を」

「それはわかっている。まあよい」

わかっているといいながら、小文治のワクワクしている胸のうちもさっしなく、居士はゆうぜんと椋の木の根に腰をすえて、目を半眼にとじ、頤の銀髯をやわらかになでている。

四

気が気ではないのに、居士はまだことばを切らないで、