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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
と、声をひそめた。
蛾次郎はグビリと頬張っていたあんころをのみくだして、
「へ?」
と、ほかにも用があるのかというような顔をした。
「おまえはたしか、石投げの名人だったな。ほかのことにかけては、ドジでも、つぶてを打たすと、すばらしく上手だった」
「親方あ――」と、蛾次郎は、卜斎の顔をゆびさして笑いながら、
「いまごろになって、あんなことをいってら。裾野にいたじぶん釜無川の下で、毎日おいらが捕ってきて親方に食べさせた、あの鮠だの岩魚だのは、みんな、石でピューッとやって捕ったんですぜ。ねエ、親方、河原の小石をこう持つでしょう、こう指のあいだにはさんでネ、魚のやつが、白い腹をチラリと見せたところをねらって、スポーンと食らわしてやるんです。どんな速い魚だって蛾次さんの石からそれたことはありませんよ。こんど親方にもその秘伝を教えてやろうか。ところが、どうして、その石の持ち方が、あれでもなかなかむずかしいんでね、だから、だれだかいいましたよ、蛾次は石投げの天才だってね」
「もういい、もういい」
と、卜斎は手をふって、
「わかったよ、わかったよ。まったくおまえは石投げの天才だ」