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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

三

である。

この利慾のふかい武士へ、伊那丸という餌をもって釣りにきたのは、いうまでもなく、武士に化けているが、八幡船の龍巻であった。

三

都より開港場のほうに、なにかの手がかりが多かろうと、目星をつけて、京都から堺へいりこんでいたのは、鞍馬を下山した小幡民部である。

人手をわけて、要所を見張らせていた網は、意外な効果をはやくも告げてきた。

「たしかに、八幡船のやつらしい者が三人、侍にばけて、穴山梅雪の宿をたずねた――」

この知らせをうけた民部は、たずねさきが主家を売って敵にはしった、犬梅雪であるだけに、いよいよそれだと直覚した。

いっぽう、その夜ふけて、梅雪のかりの館をでていった三つのかげは、なにかヒソヒソささやきながら堺の町から、くらい波止場のほうへあるいていく。

「おかしら、じゃアとにかく、話はうまくついたっていうわけですね」

「上首尾さ。じぶんも立身の種になるんだから、いやもおうもありゃあしない。これからすぐに島へかえって、伊那丸をつれてさえくれば、からだの目方と黄金の目方のとりかえッこだ」

「しッ……うしろから足音がしますぜ」

「え?」

と三人とも、脛にきずもつ身なので、おもわずふりかえると、深編笠の侍が、ピタピタあるき寄ってきて、なれなれしくことばをかけた。