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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

それは、鞍馬の隠士僧正谷の果心居士である。

文はこれでおわっている。

伊那丸は狭い暗黒から暁天へみちびかれて、自分の真にゆくべき道を教えられたような心地がした。

故郷へ、西の都へ

一

お時は、楢の木の幹につかまりながら、ふかい絶壁の下を、こわごわのぞいていた。

(どこの子供か知らないが、どうか、助かってくれればいい)

彼女は、じぶんの身の上にひきくらべて、そう祈らずにはいられなかった。

下を見ると、目がまわりそうなので、あまり崖っぷちには進みえないで、救いにいった宮内のようすも、仔細に見ていることはできないが、ときどき木の葉のすきまから、かれの活動が遠望された。

「オオ、水からあげたような……」

お時の顔に、わがことのようなよろこびの笑くぼがのぼった。すると、とつぜんに、

「これッ。――どこからこの山へはいりこんだ」

お時は、だれか力のある腕ぷしで、そこからうしろへ引きもどされた。

「あッ……」

彼女はふるえ上がって、大地へ平蜘蛛のように手をついた。

そこには、御岳の神官らしい人々が、山支度をして立っていた。

「ここは、許しがなくてはのぼれぬ、お止山ということを知らんか」