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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

本来、蛾次郎は泣いても吠えてもここでその首を、侠党の士にもらわれなければならないのであるが、独楽の由来の話から、いくぶんその情を酌量されて、宮内の命乞いにその首だけはやっとつながった。

そのうちに神官のひとりが、どこからか、ふたりの丈に合いそうな着物をもらってきてくれた。なにしろ、衣服がぬれていては、山を下りるにしても、とちゅうの寒さにたえられない。

「さあ、着るがよい」

裾のみじかい着物と膝行袴が、一枚ずつ公平にわたされた。あのおしゃべりの蛾次郎も、口をきく元気もなく、ただいくつもおじぎをつづけて、ぬれた着物をそれに着かえた。

すると――そのようすを、研ぎすましたような眼ざしで、ジーッと見つめていた巡礼のお時が、とつぜん、気でも狂ったように、

「オオ、おらの子だ! おらの子だ!」

と、おどろく蛾次郎の首根ッこにかじりついて、人まえもなく、ワッと声をあげてうれし泣きに泣きたおれた。

宮内も、がくぜんとそこへ飛びよって、

「お時さん、どうして? どうして?」

人ごととは思えないで問いただした。

「灸がある! 灸がある! これ宮内さま、この子の背なかを見てやってください。