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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「民蔵民蔵、新米の民蔵はどうしたッ」

龍巻が足を踏みならして、こうさけんだ時、船底からかけあがってきたのは、民蔵と名をかえて、堺から手下になって乗りこんでいた、かの小幡民部であった。

「おかしら、お呼びになりましたかい」

「どこへもぐりこんでいるんだ。てめえに、ちょうどいい腕だめしをいいつける。あの大鷲の上に、人間が抱きついているんだ、島から伊那丸が逃げだしたにちげえねえ、てめえの腕でぶち落として見ろ」

「えッ、伊那丸とは、なんですか」

「そんなことをグズグズ話しちゃいられねえ、オオまた近くへきやがった、はやく撃てッ」

「がってんです!」

小幡民部の民蔵は、伊那丸と聞いてギクッとしたが、龍巻に顔色を見すかされてはと、わざと勇みたって、渡された種子島の銃口をかまえ、船の真上へ鷲がちかよってくるのを待った。

と見るまに、鷲はふたたび低く舞って、帆柱のてッぺんをさッとすりぬけた。

「そこだ」龍巻はおもわず拳を握りしめる。

同時に、狙いすましていた民部の手から、ズドン! と白い爆煙が立った。

「あたった! あたった」

ワーッという喊声が、船をゆるがしたせつな、大鷲はまぢかに腹毛を見せたまま、ななめになってクルクルと海へ落ちてきた――と見えたのは瞬間。