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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「しばらく船中で手当を加えておりましたが、こよい亥の刻に、かねてのお約束どおり、船からあげて阿古屋の松原まで頭が連れてまいり、金子と引きかえに、お館へお渡しいたすてはずになっておりまする」

よどみのない使いの弁舌に、梅雪入道も疑いをといたとみえ、すぐ家臣に三箱の黄金をになわせ、じぶんも頭巾に面をかくして騎馬立ちとなり、剛者十数人を引きつれて、阿古屋の松原へと出向いていった。

「殿さま、しばらくお待ちねがいます」

途中までくると、案内役の民蔵は、梅雪入道の鞍壺のそばへよって、ふいに小腰をかがめた。

「少々おねがいの儀がござります。お馬をとめて、無礼者とお怒りもありましょうが、阿古屋の松原へついては間にあわぬこと、お聞きくださいましょうか」

「なんじゃ、とにかくもうしてみい」

「は、余の儀でもござりませぬが、今日お館のご威光を見、またかくお供いたしているうちに、八幡船の手下となっていることが、つくづく浅ましく感じられ、むかしの武士にかえって、白日のもとに、ご奉公いたしたくなってまいりました」

「悠長なやつ、かような出先にたって、なにを述懐めいたことをぬかしおるか。