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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
どうか教えてもらいたい」
「いやだ」
竹童はきつくかぶりをふった。
「なぜ?」
「わからないおじさんだナ、なんだって人がおとした手紙のなかをだまって読んだのさ。だからいやだ」
「ウーム、それも重々拙者が悪かった、ひらにあやまる」
「じゃあ話してやってもいいが、うかつな人にはうち明けられない、いったいおじさんは何者?」
「父はもと甲州二十七将の一人であったが、拙者の代となってからは天下の浪人、大津の町で弓術の指南をしている山県蔦之助ともうすものじゃ」
「えッ、じゃあおじさんも武田の浪人か――ふしぎだなア……おいらのお師匠さまも、ずっと昔は武田家の侍だったんだ」
といいかけて竹童は、まえに居士から口止めされたことに気がついたか、ふッと口をつぐんでしまった。そのかわり、これから、居士の命をうけて武州高尾にいる忍剣のところへいくこと、また過日、小幡民部から通牒がきて、なにごとか伊那丸の身辺に一大事が起っているらしいということ、さては、書中にある御方という人こそ信玄の孫武田伊那丸であることまで、残るところなく説明した。
聞きおわった蔦之助は、こおどりせんばかりによろこんだ。