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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「素浪人ッ」

さッと下から笹穂の槍を突きあげた。

「おうッ」と横にはらって返した朱柄の槍。

人交ぜもせずに、一騎打ちとなった槍と槍は、閃光するどく、上々下々、秘練を戦わせていたが、たちまち、朱柄の槍さきにかかって、猪子伴作は田楽刺しとなって、草むらのなかへ投げとばされた。

と、白旗の宮の裏から、よろばいだした法師武者がある。こなたの混乱に乗じて、そこなる馬に飛びつくや否、死にものぐるいであなたへむかって走りだした。

オオそれこそ、さきに一太刀うけて、さわぎのうちにどこかへもぐりこんでいた梅雪入道ではないか。

「やッ、きゃつめ!」

こなたにあって、天野刑部の大薙刀と渡りあっていた木隠龍太郎は、奮然と、刑部を一刀の下に斬ってすて、梅雪の跡からどこまでも追いかけた。

ピシリ、ピシリ、ピシリ! 戒刀の平を鞭にして追いとぶこと一町、二町、三町……だんだんと近づいて、すでに敵のすがたをあいさることわずかに十七、八間。

すると、何者が切ってはなしたのか、梅雪の馬のわき腹へグサと立った一本の矢、いななく声とともに、人もろとも馬はどうと屏風だおれとなった。

行く手の丘に小高いところがあった。