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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「これ竹童、なにが生意気なのじゃ」とにらみつけた。

「あッ、あなたはお師匠さま?」

さらぬだに目玉の大きい竹童が、瞳をみはってあきれ返った。なんと、鷲とおもって打っていたのは、鞍馬におるはずのお師匠さま、果心居士ではないか。

ふしぎ、ふしぎ。かれは天空から落ちたときよりぎょうてんして、からだを石のようにこわくさせ、口もきけず、逃げもできず、ややしばらくというもの、そこにモジモジとしていたが、ガラリと棒切れをすてて、地べたへ額をすりつけてしまった。

「お師匠さま。わたしがわるうござりました。どうぞごかんべんあそばしくださいまし」

「びっくりしたか、どうじゃ悪いことはできないものであろう」

居士は、ニヤリと笑って、足もとの岩へ腰をおろした。

「まったくこんな胆をつぶしたことはございません。これからけっしてお師匠さまにむだんで遠くへまいりませんから、どうかおゆるしくださいまし」

「よしよし、仕置はさんざんすんでいるのじゃから、もうこのうえのこごとはいうまい」

「エ、じゃアとんでくるうちに、あんな目にあわしたのもお師匠さまでしたか。エ、お師匠さま。どうして人間が鷲になんかになってとべるのでしょう?」