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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

それからおしてもここはかなりの高地にちがいないが、この山そのものがあたかも天然の一城廓をなして、どこかに人工のあとがある。

すると、コーン、コーン、コーンと深いところで石でも切るような音。と思えば、ザザザザーッと谷をけずるような響きもしてきた。竹童はこの深山に妙だなと思いながら、なにごころなくながめまわしてくると、天斧の石門、蜿々とながき柵、谷には桟橋、駕籠渡し、話にきいた蜀の桟道そのままなところなど、すべてはこれ、稀代な築城法の人工を加味した天嶮無双な自然城だ。

「これはすてきもないところだナ、いったいなんのためにこんな砦があるのだろう」

竹童はふしぎな顔をして、もとのところへ帰ってきてみると、いつのまにか、ほんもののクロが居士のそばにちゃんとひかえている。

「竹童、早々したくをしていかねばならぬ。用意はできているか」

「ハイいつでもかまいません。けれどお師匠さま、でがけにひとつうかがいたいことがございます」

「そんなことをいってるまに時刻がたつ」

「いいえ、たった一言、いったいここはどこの何山で、だれのもっている砦でございましょうネ」

「おまえなどは知らないでもいいことだが、お使いをする褒美として聞かしてやろう。