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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「心得た」
小文治は朱柄の槍をひッかかえて、十五名の力者をひきつれ、人穴をさして、たちまち草がくれていく。
「さて蔦之助どの、そこもとは残る十七名の兵をもって、一隊の弓組をつくり、殿堂をかこい嶮所に登って廓のなかへ矢を射こみ、ときに応じ、変にのぞんで、奇兵となって討ちこまれい!」
「承知いたしました」
「拙者は、のこりの者とともに後詰をなし、若君の旗本、ならびに、総攻めの機をうかがって、その時ごとに、おのおのへ合図をもうそう。さらばでござる」
軍配のてはずを、残りなくいいわたした民部は、ひとりそこに踏みとどまり、人穴攻めの作戦図を胸にえがきながら、無月の秋の空をあおいで、
「敗るるも勝つも、小幡民部の名は、おしくもなき一介の軍配とりじゃ。しかし……しかし伊那丸さまは大せつな甲斐源氏の一粒種、あわれ八幡、あわれ軍の神々、力わかき民部の采配に、無辺のお力をかしたまえ」
正義の声は、いつにあっても、だれの口からほとばしっても、ほがらかなものである。
五
英気をやしなうため、宵のくちに、ほんのちょっと寝ておくつもりだった竹童は、いつか鼻から提灯をだしてわれにもなく、大いびき。