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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「いいや、いいや。一ツや二ツくらいとってかまうもんか。柿なんか、ひとりでに、地べたから生えてるものなんだ。これを取ったッて、泥棒なんかになりゃしない」

勝手なりくつをかんがえて、ぴょいと、木へ飛びつくと、これはまたあざやかなもの。なにしろ、本場鞍馬の山で鍛えた木のぼり。するッと上がって、一番赤い柿のなっている枝先へ、鳥のようにとまッてしまった。

「べッ、しぶいや」

びしゃッと下へたたきすてる。

「ありがたい――」

次のは甘かったと見える。もう口なんかきいていない。猿のようにカリカリ音をさせて頬ばり、たねだけを下へはきだしている。

「甘いなあ、これで一霜かかればなお甘いんだ。おいらばかり食べているのはもったいない、お師匠さまにも一つ食べさせてあげたいな……」

食うに専念、ことばはブツブツ噛みつぶれた寝言のようだ。このぶんなら、まだ十や十五は食えそうだという顔でいると、どうしたのか竹童、時々、チクリ、チクリと、変に顔をしかめだした。

「ア痛!」と粘った手で頬っぺたをおさえた。

が、またすぐ食う。

木を降りるのもおしいようす。と、一口かじりかけると、またチクリ。