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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

たものらしい。

「あの竹童のやつをひっ捕らえていったら、さだめし呂宋兵衛さまもお喜びになるだろうし、おれにとってもいい出世仕事だ。どれ、一つ追いついて、ふんづかまえてくれようか」

いうかと思うまに、もう燕作は、礫のとんでいくように走っていた。それを見るとなるほど稀代な早足で、日ごろかれが、胸に笠をあてて馳ければ、笠を落とすことはないと自慢しているとおり、ほとんど、踵が地についているとは見えない。

竹童も、逃げに逃げた。折角村から蛭ヶ岳の裾を縫って街道にそって、足のかぎり、根かぎり、ドンドンドンドンかけだして、さて、

「もうたいがい大じょうぶだろう――」と立ちどまり、ひょいとあとをふりかえってみると、とんでもないこと、もうすぐうしろへ追いついてきている。

「あッ」またかける。燕作もいちだんと足を早めながら、

「やあい、竹童。いくら逃げてもおれのまえをかけるのはむだなこッたぞ」

「おどろいた早足だな、早いな、早いな、早いな」

さすがの竹童も敵ながら感心しているうちに、とうとう、ふたたび燕作のふと腕が、竹童の襟がみをつかんで、ドスンとあおむけざまに引っくりかえした。