轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
湖水の主の山椒の魚かとみれば、水をきッてはいあがったのはひとりの若僧――かの忍剣なのであった。
どっかりと、岸辺へからだを落とすと、忍剣はすぐ衣をさいて、ひだりの肘の矢傷をギリギリ巻きしめた。そして身をはねかえすが否や、白旗の宮へかけつけてきてみると、伊那丸のすがたはみえないで、ただじぶんの鉄杖だけが立てかけてのこっていた。
「若さま――、伊那丸さまア――」
二ど三ど、こえ高らかに呼んでみたが、さびしい木魂がかえってくるばかりである。それらしい人の影もあたりに見えてはこない。
「さては」と忍剣は、心をくらくした。湖水のなかほどへでたとき、ふいに矢を乱射したやつのしわざにちがいない。小さなくりぬき舟であったため、矢をかわしたはずみに、くつがえってしまったので、石櫃はかんぜんに湖心のそこへ沈めたけれど、伊那丸の身を何者かにうばわれては、あの宝物も、永劫にこの湖から世にだす時節もなくなるわけだ。
「ともあれ、こうしてはおられない、命にかけても、おゆくえをさがさねばならぬ」
鉄杖をひッかかえた忍剣は、八ぽうへ血眼をくばりながら、湖水の岸、あなたこなたの森、くまなくたずね歩いたはてに、どこへ抜けるかわからないで、とある松並木をとおってくると、いた! 二、三町ばかり先を、白い影がとぼとぼとゆく。