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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
かれらの目には、なんというはんだんもつかなかったが、地上から明かりをむけたせつな、かつて、話にきいたこともない怪鳥が、虚空に風をよんで舞ったのが、チラと見えた。
それは鷲の背をかりて、白旗の森をとびだした竹童なることは、いうまでもない。
鞍馬そだちの竹童も、こよいは一世一代のはなれわざだ。果心居士うつしの浮体の法で、ピタリと、クロの翼の根へへばりつき、両端へ火をつけた松明をバラバラおとす。火先はさんらんと縞目の筋をえがいて、人穴城へそそぎ、三千の野武士の巣を、たちまち大こんらんにおとし入れてしまった。
「ああ、いけねえ」
と、その時、ふと、つぶやいた竹童。
空はくらいが、地上は明るい。人穴城のなかで、右往左往している態を見おろしながら、
「こっちで投げる松明を、そうがかりで、消されてしまっちゃ、なんにもならない。オヤ、もうあと四、五本しかないぞ」
なに思ったか、クロの襟頸をかるくたたいて、スーと下へ舞いおりてきた。いくら大胆な竹童でも、まさか人穴城のなかへはいるまいと思っていると、あんのじょう、れいの望楼の張出し――さっき呂宋兵衛たちのいたところから、また一段たかい太鼓櫓の屋根へかるくとまった。