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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「おじさん、おじさん、そんなことをいってると、ほんとうに鉄砲薬の山が、ドカーンとくるぜ、おいらのいったのは、うそじゃないからね」

「では竹童、すこしも早く逃げるがいい」

「えッ、おいらを逃がしてくれるというの」

「おお秀吉公は、伊那丸どのに悪意をもたぬ。あのおん方に、会ったらつたえてくれい、可児才蔵と申す者が、いずれあらためて、お目にかかり申しますと」

「はい、しょうちしました」

ないとあきらめた命を、思いがけなく拾った竹童は、さすがにうれしいとみえて、こおどりしながら、まえの欄間へ足をかけた。

「あぶないぞ、落ちるなよ」

まえには足をひっ張った才蔵が、こんどは下から助けてくれる。竹童は棟木の上へ飛びつきながら、

「ありがとう、ありがとう。だが、おじさん――じゃあない可児さま。あなたも早くここを降りて、どこかへ逃げださないと、もうそろそろ煙硝の山が爆発しますよ」

「心得た、では竹童、いまの言伝を忘れてくれるな」

といいすてて、可児才蔵はバラバラと望楼をおりていったようす、いっぽうの竹童も、やっと屋根瓦の上へはいのぼってみると、うれしや、畜生ながら霊鷲クロにも心あるか、巨人のように翼をやすめてかれのもどるのを待っていた。