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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
いま、拙者が遠矢をかけて追いたてるから、あとは斬るとも生けどるとも、おのおの鑑定しだいにしてくれ」
「ウム、心得た」
といったへんじよりは、龍太郎と小文治、金明泉へむかって馬を飛ばしていたほうがはやかった。
蔦之助は、鷹の石打ちの矢を一本とって、弓弦につがえ、馬上、横がまえにキラキラと引きしぼる。
――小一町は、駿馬項羽で一足とび、
「やッ、しまった!」
と、そこまできて龍太郎はびっくりした。なぜといえば、いましも金明泉のほとりから、笹叢をガサガサ分けてでてきたのは、呂宋兵衛の残党どころか、大せつな大せつな鞍馬の竹童。
竹童はなんにも知らない。金明泉の水でも飲んできたか、袖で口をふきながら、ヒョイと、岩角へとび乗ってわざわざ蔦之助のまとに立ってしまった。
龍太郎はあわてて、うしろのほうへ馬首をめぐらし、
「待てッ、味方だ!」
「竹童だ、うつな!」
小文治も絶叫した。
が、間にあわなかった。プツン! とたかい弦鳴りがもうかなたでしてしまった。
射手は名人、矢は鷹の石打ち、ヒューッと風をふくんで飛んだかと思うと、狙いはあやまたずかれの胸板へ――
あっけらかんと口をふいていた竹童、睫毛の先にキラリッと鏃の光を感じたせつなに、ヒョイ――と首をすくめて右手すばやく稲妻つかみに、名人の矢をにぎり止めてしまった。