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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
竹童、龍太郎から受けとった狼煙筒を、ふところに納めると、またまえにでてきた笹叢のなかへ、ガサガサと熊の子のように姿をかくしてしまった。
おや? あんな大言を吐いておいて、どこへもぐりこんでゆくのかと、こなたに三人がながめていると、折こそあれ、金明泉のほとりから、一陣の旋風をおこして、天空たかく舞いあがった大鷲のすがた――
地上にあっても小粒の竹童、空へのぼると、鷲の一毛にもたらず、かれの姿は、翼のかげにありとも見え、なしとも思われつつ、鷲そのものも、たちまち鳩のごとく小さくなり、雀ほどにうすらぎ、やがて、一点の黒影となって、眼界から消えてゆく。
雲井にきえた鷲と竹童。甲駿二国のさかいを、蛇の目まわりに、ゆうゆうと見てまわって、とうとう、この法師野の部落に、和田呂宋兵衛一族の焼けだされどもが、よわい村民をしいたげているようすをとくと見さだめた。
このあたり、野火の煙がないので、竹童が鷲の背から小手をかざしてみると、法師野の山村、手にとるごとしだ。部落の家には、みな人穴城の残党がおしこみ、衣食をうばわれた善良な村人は、老幼男女、のこらず裸体にされて、森のなかに押しこめられている。