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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

料とするがいい」

「だから、おいらはよけいにかなしいんだ……。人穴城へなげ松明をした手柄も、きのうの誉れをあげたこともみんな、おいらの力よりはクロの手柄。……クロがあってこそこの竹童も、人並以上の働きができたのに、おいらばかりこんなに褒美をもらっても、ちっともうれしくありゃしない……」

いうところは天真爛漫、竹童はいよいよクロの別れをかなしみ、いよいよ声をだして泣くばかり――さすがの龍太郎も、これには弱りぬいて、ことばをつくしてなぐさめたうえ、きょう一日は陣休みだから、とにかく久しぶりに、じゅうぶん心もからだも養っておくようにと、幕のあなたへでていった。

「はい、もう泣くのはやめます……」

竹童は龍太郎の立ちぎわにそういったが、ひとりになるとまたさびしさに耐えぬもののごとく、ションボリと陣屋の空を見あげていた。そして、つまらなそうに、馬糧のなかにゴロリと身をよこたえたが、やがて連日の疲労がいちじにでて、むじゃきないびきが、スヤスヤそこからもれはじめた。

ここに、得意なやつは、泣き虫の蛾次郎。

首尾よく、鷲ぬすみのはなれ業をやりとげて、飛行天行の怪をほしいままに、たちまちきたのは家康の采地浜松の城下。