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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

なにしろきょうは、けっこうな日である。

戦をしている秀吉にはここへくるひまもないだろうが、百姓には百姓のわざ、商人には商人のわざがある。大いにお祭をし、大いにはたらけ、それが秀吉さまもおすきだぞ! とばかり、いまも本殿三座の御榊をひっかついで、ワーッと矢大臣門へなだれてきたのは、やすらい踊りのひとかたまり。

紅衣の楽人たちが笛をはやし、白丁狩衣の男たちが鉾や榊をふって、歌いに歌う。そして輪になった女子供が花棒ふりふりおどって歩く。

するとこの踊りの渦まきが境内の神馬小屋のまえまできたとき、

だれか! どこかで?

「キャーッ!」

と悲鳴をあげたのである。

だが――うかれ、熱している踊りのむれ。それにも気がつかずに、なおも足なみを練ってゆくと、こんどは、

「わーッ」

といって、白丁の衛士がふいにぶッ倒れた。

白丁だから目についた。たおれた姿が血まみれである。

「踊りをやめろ! 踊りをやめろ!」

「踊るやつは、ぶッた斬るぞッ」

おどろくべき乱暴者が、いつのまにやら、この極楽へまぎれこんでいたのだ。

ふいに、破れ鐘ごえでこう叫んだのを見ると、雲つくような大男が三人、大小打ッこみ、侍すがた、へべれけに酔って熟柿のような息をはき、晃々たる大刀をぬきはらい、花や女子の踊りにまじって、ブンブンふりまわしているのだからたまらぬ