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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

いま、かれは無我無心に、相手の脳天をねらってとんだ。

――それは剣法でいう梢斬りともいうべきあざやかなものである。たれかよく、宙天から斬りさげてくるこの殺剣をのがれ得よう。

ところが――相手は苦もなくかわした。

風のごとく身をひるがえし、さらに持ったるなんらかの得物で、パーンと竹童の般若丸をはらいつけたのである。

と、竹童、思わず両手のしびれに柄をゆるめたので、般若丸は彼の手をはなれて地上におちた。無手無眼となった竹童は、もう打ってかかるものは、五体そのものよりほかはない。

「おのれッ!」

というと、隼のように、相手の胸もとへとびかかって、ムズと襟をつかんだのである。

だが、そのとたんに竹童は、

「あッ――人ちがい!」

といったまま、のけ反るばかりな驚きにうたれた。いまが今まで、蛾次郎とばかり思って斬りつけていた当の人は、枯巌枯骨そのもののような老人であったのだ。

「オオ、ちがった、人ちがいであった。――どなたかぞんじませぬが飛んでもない無礼をしました。どうぞかんにんしてくださいまし」

こういうとその老人、枯れ木のような手をのばして、竹童の肩をやさしくかかえこんだ。