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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

ものは目ばかりでみるものではない。心の目をひらけば宇宙の果てまで見えてくるよ。……しかし、おまえはまだ歳も歳じゃ、このりくつは、ちっとむずかしかろう」

「はい、わたしにはよくわかりませぬ」

「よしよし、おまえの目は、もともと生まれつきの眼病ではない。吹針の蚕婆、あれの毒針に目をふかれたためじゃ。わしが一つなおしてやろう」

「えッ、お、お師匠さまッ。ではこの目を見えるようにしてくださいますか」

「ウム! 竹童。まずその太刀を鞘におさめて、わしの腕にしっかりとつかまっているがよい」

いわれるまま竹童は、地べたをさぐって般若丸をひろい、果心居士の右腕にからみつくと、居士は藁でも持つようにフワリと竹童のからだを小脇にかかえ、やがて、八神殿の裏宮から境内をぬけ、森々たる木立のおくへ、疾風のように駈けこんでいった。

竹童はおよぐように引っかかえられていた。

さっさつと――風があたる。

バラバラと雨のごとき夜露がぶつかる。

居士は愛弟子竹童をかかえて、いったいどこへつれていく気か? やがて森林をぬけて、紫野のはて、舟岡山の道を一さんにのぼりだした。

ゴウ――ッという水のおと。