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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
その火のぬくみに全身の血が活々とよみがえってくるのをおぼえて、かれは、この新しい力を、どこへそそごうかと勇みたった。
話をきけば、夜明けとともに、若君の伊那丸は、ふたりを力に、天ヶ丘から降りてくる和田呂宋兵衛の一族をむかえ、桑名に送られる父勝頼君をうばいとらねばならぬとのことである。
いい機会にめぐりあった竹童は、その壮挙に加わりたいとねがって、すぐ伊那丸の許しを得た。
「では、龍太郎さま、忍剣さま」
かれは、気早に立ちあがって、
「まだ夜は明けておりませぬが、わたしは一足さきに、天ヶ丘へのぼって、呂宋兵衛のようすをさぐり、やがてほどよいところから、みなさまに合図をいたすことにいたしまする」
「ウム、いつも間諜の役は竹童の得意、おまかしなされてはどうでござりましょう」
忍剣が伊那丸の顔をあおぐと、伊那丸も小気味よいやつとうなずいて、竹童のすがたを見ながらこういった。
「では、われわれ三人は、天ヶ丘から十四、五町手まえ寒松院の並木にかくれて待つであろう。そちは身なりの目立たぬのをさいわい、出立のようす、人数、道順、落ちなくさぐって知らせてくれい」
「はい。かならずくまなく見とどけてまいります。