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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「ああ、またきたな」

と思ったが、はやる心をおさえて、なお盲のふりをしながら、しずかに天ヶ丘へのぼりだすと、蛾次郎は、それとも知らずに、

「オイオイ、つんぼかい?」

いよいよ図にのって、減らず口をたたきだした。

「ゆうべはつんぼじゃなかったはずだ。盲の上にツン的ときたひにゃ、それこそ、でくの坊よりなッちゃあいねえからな。ええオイ竹童……おッと、こいつは俺がまちがった。おまえは八神殿の床下をお屋敷としている、天下のお乞食だッたんだっけ。それじゃ返事をしないはずだよ。ではあらためて呼びなおすことにしよう……」

蛾次郎、ますますお調子づいて、いまや、その身が竹童の般若丸の切ッ先に、まねき寄せられているとは知らずに、ノコノコとすぐ後ろへまで近よっていった。

そして、黄色い歯をムキだして、ゲタゲタと笑いながら、竹童の顔を、肩ごしにのぞくようにしながら、

「――もし、天下のお乞食さま。おめえ、これからどこへいくのよ。南蛮寺の台所か、それにゃ、まずすこし時刻が早かろうぜ。おあまりは朝飯すぎにいかなけりゃくれやしないよ。うふふふふ……怒ってるのか。澄ますなよ。はずかしいのか、蛾次郎さまにすがたを見られて……。