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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「あッ! こ、こいつ」

「よくやってきた。思いしれ」

と竹童は、その利き腕をねじあげて、石段の中途へ、押したおした。

「おう! て、てめえ目が見えるのか」

と押しふせられながら蛾次郎は、胆をつぶして、ふるえあがった。竹童はその上へのって、膝がしらで、相手の腕をおしつけ、両手で喉と腕首をしめつけて、ビクとも動きをとらせずに、

「やい蛾次公! よくもおのれは、この竹童を、さんざんに恥ずかしめたな。うぬッ、どうするかおぼえていろ」

「あッ――か、か、かんにんしてくれ」

「えい、いまになって、卑怯なことをいうな」

「あやまる、あやまる、あやまる! あやまりますから! かんべんしてくれッ!」

「だめだ! だめだ! だめだッ。もうなんといッたってゆるすもんか、ここでおいらの手につかまったのが百年目だ、般若丸の斬れあじを試してやるから、そう思え」

と、刀の柄へ手をやった。

「アア待ってくれ、竹童、竹童さまーッ」

と、蛾次郎はついに本性をだして、ベソをかきながら悲鳴をあげた。

「待ってくれよ、おめえに返すものがある。おれを殺してしまうと、それがわからなくなるぜ」

「なに? 返すものが……オオ鷲をか」