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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
「もうたくさんだ、たくさんだ。そう一ぺんに慾ばらねえでも、ちかごろは、ゆくさきざきに戦のある世の中だ。まごまごしているまに、秀吉の陣見まわりでもきた日には大へんだ」
また、こういって、そこにスパスパ煙草を吸っていたのは、すなわち、和田呂宋兵衛、ほかの二人は蚕婆と丹羽昌仙だ。
これで事情はおよそわかった。
秀吉の御感にいって、出世の階段をとびあがるつもりでいた勝頼探索の結果が、あの通りマズイはめとなったうえに、命令以上なでしゃばりをやッたので、ついに、軍律をもって陣屋追放をうけたというから、そこで呂宋兵衛は、もちまえの盗賊化して、これから他国へ逐電するゆきがけの駄賃とでかけているところであろう。
いくら捨て鉢になったにしろ、よくこんな、残忍な盗みができることと思うが、根を考えると、富士の人穴に巣をかまえていた時から、和田呂宋兵衛、このほうが本業なのだ。
「頭領、思いがけなく、金目なものがありましたぜ」
と、二、三十人ほどの手下が、そこへ、剥ぎとった太刀や陣羽織や金をつんでみせると、呂宋兵衛は土手の上からニタリと横目にながめて、
「そうだろう。このへんに討死しているやつらは、おおかた滝川一益の家来で、ツイきのうまでは、桑名城でぜいたく三昧なくらしをしていた者ばかりだからな。