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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

かれはだまって、いつまでも下をむいていた。

「いけないと見えるな……ウーム、これだけはさすがのわしも困ったな」

そこへ、巫女の少女が粥をはこんできたので、宮内はそれを竹童にあたえ、蛾次郎の分はじぶんが持って、また以前のところへもどってきた。

お粥のけむりを見ると、空腹で、喉から手がでそうなくせにして、蛾次郎はプンプンと怒った。

「けッ、またおかゆかい、おじさん」

「うごかずにいる間は、まアまアこれでがまんをしなければ」

「じょうだんじゃねえや、おれなんか、裾野にいたじぶんから、ズッと奈良や京都のほうを見物して歩いてる時なんかも、こんなまずいものを一どだって食ったことはありゃしねえ」

「ほウ、おまえはそんなぜいたくだったのか」

「そうさ、おいらはこう見えても、徳川家へゆけばはぶりがきくんだからな。浜松にいる菊池半助という人を知っているかい。おじさんなんか知るめえ。隠密組で第一ッていう人よ。おれはその人にずいぶん小判をもらったぜ、つかいきれないほどあった――アアつまらねえつまらねえ、また浜松へいって、少しお金をせびッてこよう」

ひとりでペラペラしゃべりながら、まずいといった粥を一つぶのこらずなめてしまった。