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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
あおむけに寝ながら、足で床板をふみ鳴らし、口から出放題にあたりちらしていると、その仕切境の板のむこうがわで、
「やかましいッ」と、小気味のいい一喝がツンざいた。
「オヤ、なんだと!」
ムクムクと身をおこした蛾次郎。
「なにがやかましいッ!」と負けずにどなりかえした。
だが、じぶんの声が、ガーンとくらい塔の内部へひびいただけで、もう向こうにいる竹童は、それきり、かれの相手になってこなかった。
火独楽と水独楽
一
強がりンぼで横着で、すぐツケあがる泣き虫の蛾次郎。いざとなれば声をだしてわめくくせに向こうでだまりこむと、その足もとをつけこんで「やい、竹童ッ」と、こっちからけんかを吹ッかける。
これだから菊村宮内も、この性のあわないふたりを、一つのじぶんの手にすくって、難儀をしているところなのだ。で、どうかして、仲をよくしてやりたいと考えてはいるが、なにしろ蛾次郎は、からだを養生するうちに菊村宮内のやさしさに馴れ、すっかり増長している気味だから、とても竹童と手をにぎって、心から打ちとけるべくもない。
「やいなんとかいえよ!」
業をにやして蛾次郎は、さかいの板をドンドンとたたいた。