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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「こんどはわしのいうことをきいてくれる番だぞ。よいかな。明日この島をでて、向こうの陸へあがってから、もうわしがそばにいないからよいと思って、その仮面をとるが早いか、喧嘩や斬りあいをするのでは、今日までの宮内のこころは無になってしまう」

「ごもっともでございます」

と蛾次郎、みょうなところでばかていねいな返辞をした。笑いもしないで竹童はまじめに、

「それで、宮内さまのおたのみというのは、いったいなんでございますか」

とかたずをのむ。

「ほかではないが、ふたりの遺恨を、きょうからこの独楽にあずけてしまって、たがいに、討つか討たれるか、命のやり取りをしようという時には、この独楽で勝負をしてもらいたい。そうすれば、独楽はくだけても、そなたたちのからだに怪我はできないから」

「わかりました」

「その儀、きっと承知してくれるだろうな」

「じゃア、なんですか?」とまた蛾次郎が反問した。

「たとえば、わたしたちの争っている大鷲を、どっちのものにするかという時にも、つまり、この独楽のまわしッくらで、きめるんですか」

「そうだ、そればかりでなく、今日のような場合でも、腹がたったら独楽で勝った者のいいぶんを通すなり、または、あやまるということにしたら、なにもつかみあって湖水におぼれるまでの必要もなくなるであろう」