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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「まいるぞッ!」

と、いきなり魔獣のような気合いがかかった。

はッ――として、竹童の五体も、おもわずその凄まじさにすくんでしまおうとしたせつな――

「ええッ」

とわめいた卜斎の大剣が、電火のごとく竹童の頭上におちてきた。あッ――といったのは刀下一閃のさけび、どッと、血けむりを立てるかと思うと、必死の寸隙をねらって、竹童の右手がふところをでるやいなや、

「なにをッ」

と一声、待ちかまえていた独楽のつぶてを、パッと卜斎の眉間へ投げつけた。

すると、まっ赤な火独楽は、文字どおり、一条の火箭をえがいて、しかも、ピュッとおそろしい唸りを立て、鼻かけ卜斎の顔へ食いつくように飛んでいった。

「おお、これはッ?」

と、おどろいた卜斎、斬りすべった厚重ねの太刀を持ちなおす間もなく、火の玉のように宙まわりをしてきた火焔独楽をガッキと刀の鍔でうけたが、そのとたんに、独楽の金輪と鍔のあいだから、まるで蛍籠でもブチ砕いたような、青白い火花が、鏘然として八方へ散った。

「うつッ……」

と、卜斎が、片手で眼をふさいだ間髪に、竹童はいちはやく、般若丸の刀をひろって、バラバラッと廊下へでたが、それと一しょに、奇蹟の火焔独楽、ポーンとはね返って、竹童の手もとへ舞いもどってきた。