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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「たわけめ。でろ、ここへ!」

とどなりながら、卜斎はすこし苦笑をもらしてしまった。

いまでも、裾野当時の気持で、じぶんへあやまるのに、親方親方と呼んだところが、いくぶんか正直らしいと、おかしくなって、この蛾次郎には、竹童へ向かったような、ああいう本気にはなれなかった。

「かんべんしてください、親方、後生です」

「でろと申すに!」

「あッ、苦しい……いまでます、いま……」

「このバカッ」

力まかせに引ッ張りだして、イヤというほど叩きつけようとすると、蛾次郎、頬ッぺたをおさえて飛び退きながら、

「親方、どうも、お久しぶりでした」

ピョコンと、おじぎをして、たくみに、あとの拳骨を予防した。

「蛾次郎!」

「へいッ」

「きさまはだれにゆるされて、方々かってにとびまわっているんだ」

「もうしわけございません」

「まだ、きさまにひまをだしてはいないぞ」

「承知しています。これから、けっして気ままにあそんで歩きません。はい、親方の腰についております」

「また、なんのために、この竹生島へなどきているのだ」

「琵琶湖で土左衛門になるところを、ここの神主のやつが助けやがったんで……わたしがきたいと思ってきたところじゃありません」