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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

「わかるか、きさまに」

「このふもとを、十町ばかり歩いてみれば、きっとさがしあててごらんにいれます」

「こりゃ天祐だ! そちにその間道がわかるとならば、ぜひとも一つたずねてくれ」

「よろしゅうございます。では、しばらくそこで一服吸ってお待ちください。そして、わかりましたところから松明を空へ投げるといたしましょう。――これよ、蛾次!」

「ヘイ」

「おまえ、あちらの方の持っている松明をお借りして、わたしのあとからついておいで」

「親方ア」

「なんだ」

「早く甲府へゆきましょうヨ」

「待て待て、せっかく、ご一同のお困りだ、ひと働きしてあげよう」

「だっても……」

「なにが、だってもじゃ」

「おらア、もうお腹がペコペコなんだもの」

「たわけめ! なにをいうか」

むこうで人足たちが、焼するめと焼米を頬ばっているのを見て伊部熊蔵、それが欲しい謎だろうとさっして、

「オイ、だれか、この鼻ッたらしに、なにか食い物をやってくれ」

といった。

蛾次郎はニヤニヤとなるのをかくしながら、

「親方、ここが小太郎山とはおどろきましたネ」

と思いだしたように小手をかざした。

緋おどし谷の少女たち

一

扇縄の水の手――山城の貯水池をさして、そう呼ぶのである。