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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

ばらばらと櫓梯子を下りると、ふたりは真一文字に奥郭の内部へはいった。そして、岩壁、洞窟を利用して建てられてある、とりでの本丸のなかへ走りこんだ。

具足部屋、評定の間、寝所、みな広い床張りで、そこには毒死の侍もなくしんとしている。伊那丸の留守に錠口のさきからだれも人を入れなかったところなので――。

まッしぐらにぬけて、軍師の部屋の扉を開けた。

ここも、小幡民部と蔦之助と小文治の三人が、ひそかに、間道から影をかくして、三方ヶ原へ立っていったのちに、ぜったいに部下をのぞかせずに、三人の下山を秘密にしていたところ。

ガラッと、厚い車戸を押しあけて、そこへはいると、咲耶子と竹童は、まっくらな床板を手さぐりでなでまわした。

二

例の間道の口をたずねているらしい。

と。

指のかかるところがあった。

ここを開ければ、八合目の柵、三の砦、すべての外城一郭へはむろん、麓へでもどこへでも自由に通りぬけることができる。

ふたりはまず、八通の間道をぬけて、いま山の中腹にみえた味方を呼びいれてこようとするつもり。

であったが? ……

「ヤッ、妙な音?」

床板をめくりかかった竹童が、ギョッとした目を咲耶子へ向けて、