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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

それに、火縄の下にあったのも二箱か三箱なので、火に吹かれたのは山掘夫の十二、三人、あとは悲鳴の声のあがったのを見ても、いのちだけは助かったらしい。

咲耶子と竹童は、脱兎のように、軍師の間のそとへ飛びだしていた。そして、そのあとから伊部熊蔵と卜斎などが、黒けむりと一しょにはきだされて、ふたりのあとを追いかけた。

まえの井楼の下まできたとき、咲耶子は足をとめた。

「ちッ……」

なにかいおうとしたらしいが、いまになって焔硝にむせんで、あとのことばがでずにしまう。

竹童も、ハッとふとい息をついた。まッくろな煙の柱が、もくもくと宙天におどりあがっているのを見る。……

「わ、わたしは、少し思うところがあるから、ここに踏みとどまって、最後の力をつくします。竹童さん、おまえははやく樺の林へもどり、あすこにつないである鷲に乗って、ここを落ちておくれ、後生です。早くここを、逃げてください」

「に、逃げろッて?」

「ふたりとも、ここで斬り死してしまっては、民部さまへ事情を知らせる者がない」

「いやだ! いやだ、おいらは!」

生きのこった山掘夫どもが、もう向こうからワッワッとわめいてくるようすなのに、竹童は頑とそこをうごかないで、強くかぶりをふっていった。