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しんしゅうてんまきょう
神州天馬侠
吉川 英治
「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页
われわれを怖れていることは事実だが、けっして、ほんとの敵と思われていないことはよくぞんじているから、いまに空とぼけた顔をして、独楽を取りかえしにくるにそういあるまい」
「なるほど」
と、小文治も槍にすがりながら、蛾次郎という小童についてよく考えてみると、末おそろしいといっていいか、末たのもしくないといおうか、まったく判断に苦しむような性格的畸形児であると思った。
「で、かれはいま、卜斎に召使われて、この躑躅ヶ崎の長屋にすんでいる。とすれば、いずれ内部のようすを多少ながら聞きかじっているにそういあるまいから、ここへきたところを捕まえて、いろいろその後のことをさぐって見ようと思う。それにはまず、この独楽を取りあげておいて、いうかいわぬかの責め道具にする。あいついかに横着者とはいえ、まだ子供は子供、きっと独楽をもどして欲しさに、なにもかもしゃべりだすにちがいない――と考えたので、大人げないが、横合いからさらってきた」
「しかし、龍太郎」
「うむ?」
「芸人なら種もあろうが、貴公、どうしてあの独楽を、槍の石突きですくい取ったか、あんな離れわざは本職の独楽まわしでもやれまいと思うが、ふしぎなかくし芸を持っておられるな」