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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

追ってまいったのでございます。どうぞ、あの金がなくては、これからさきのながい旅ができない身の上、かわいそうだと思って、お返しなすってくださいまし」

「この女めッ、だまっていりゃいい気になって、まるで人を盗っ人のようにいやあがる」

「どういたしまして、けっしてそんな大それたことを申すのでは」

「やかましいやいッ。てめえがおれたちに金入れを取られたといやあ、おれたちふたりは泥棒だ。よくも人に濡衣を着せやがった」

「あれッ、そのふところに見えます金入れが、たしかに、わたしの持っていた包みでございます」

「飛んでもねえことをいうねえ。こりゃ、おれが甲府の町でさる人からあずかってきた金入れだ。それを見やがってぶっそうないいがかり、どッちが白いか黒いか代官所へでてやるところだが、女巡礼を大の男ふたりで相手にしたといわれるのも名折れだ。さ、命だけを助けてやるから、サッサとでていきやがれ」

馬の草鞋にもひとしい土足が、むざんに女の肩をはげしくけった。

「これ、なにを無慈悲なことをなさる」

菊村宮内はわれをわすれて、その女巡礼の身をかばいながら、

「ふびんではござらんか、かような巡礼道の人の持物を巻きあげて、それがどれほどおまえたちの幸福になるものじゃない。