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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

徳川家からでる和田呂宋兵衛がきのう箱根をとおった。お小姓とんぼ組の連中がうつくしい行列で練りこんでいった。菊池半助がいった。やれだれがとおった。なんのなにがしもくりこんでいったと、小田原城の若ざむらいは血をわかしていた。

なんにつけても氏直は、いま、四隣へ虚勢を張っているところだ。

「当家の武芸のほどをしめしてやれ」

と、これは秀吉よりも大のり気で、すでに城内で数度の下試合をやらせたうえ、家中から選抜して武芸者十名、鎖帷子組となづけてめいめいにおなじよそおいをさせ、応援として若ざむらい百二十人をそえ、示威どうどうとして、足柄裏街道から甲州路をぬけて、武州御岳へ参加することになった。

「ほう、あれや小田原の北条だな」

その人数と、ちょうど位牌ヶ岳の追分でぶつかった井上大九郎、つれのふたりをかえりみて、

「戦にはあまりつよくない連中だから、せめて試合に勝とうというんだろう」

大口をあいて笑いながらいった。

「よせよせ、大九郎」

才蔵は、道ばたに寄って、その人数をわざとやり過ごしてから、

「大きな声をすると聞えるじゃないか」

「聞えたって、なあに、かまうもんか。