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しんしゅうてんまきょう

神州天馬侠

吉川 英治

「少年倶楽部」1925(大正14)年5月号~1928(昭和3)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 511,765 字 · 1011 页

青空文庫

と思うと、その顔も、死んだおやじに似ているように見えてくるし、いまにもニッコリふりかえって、

「あッ! おッ母さん!」

と飛びついてきやしまいかと思われるのだった。

「ああ、足が早い、足が早い、まあなんて足が早い子なんだろう。ちょっと、こっちをふり向いて、わたしに横顔でも見せてくれればいいのに」

捨ててきた宮内が心配していることも、いまはすっかり忘れてしまった。

――とも知らずに、さきへゆくのは十五、六のなりの大きな腕白小僧。

ピキ、ピッピキ、トッピキピー

木の葉笛をくちびるに当てて、しきりと奇妙きてれつなちょうしで大人をおどかしてゆく。

どこかへ買物にいってきたものとみえて、片ッぽの手にふろしきをさげている。そのふろしきがほとんど手にあるのを忘れて、

ピキ、ピッピキ、トッピキピー

木の葉笛で元気がいい。

「ああ、あれが自分の子だったら、どんなだろう」

お時も夢中で追いかけた。

そして、女の足では苦しいほどいそいで、やっとうしろから追いつきかけたお時は、横へまわるように馳けぬけて、その少年の横顔をのぞきこんだ。

――見ればあまりいい顔だちではない。すこしばかり青い鼻汁をたらしかけている。